マルハナバチの技術情報 |
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■マルハナバチが花粉を集める理由
マルハナバチは受粉能力の高い昆虫で、一頭の成虫が1分間に20〜30花に訪花することが知られています。
花に訪れる順序は極めて計画的で下から上へ訪花し、花粉のない花には決して行きません。
彼らはどうしてこのように多量の花粉を必要とするのでしょうか?
理由その1:幼虫の餌となる
花粉はタンパク質を含んでおり、これが幼虫を育てるための栄養となります。巣の中の幼虫は花粉を与えられることで成長します。
幼虫は花粉を数日間与えないと死滅してしまいます。
もしも全ての幼虫が死滅すると、成虫は花粉を必要としないため訪花活動をしなくなり、トマトの受粉がなされなくなります。
したがってトマトの花に充分な花粉が出ていない時期は乾燥花粉を与えることが必要になります。
理由その2:巣の材料にする
マルハナバチの巣はとっくり状の部屋がいくつも並んだ形をしており、それぞれに卵を入れておく部屋、幼虫を飼育する部屋、蜜を貯めておく部屋、花粉を貯めておく部屋などの役割があります。
群が大きくなりハタラキバチや幼虫が増えるにしたがって、この巣の数もたくさん必要となってきます。
この巣を作る材料として花粉を利用するわけです。
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トマトの花を受粉中のマルハナバチ |

受粉の完了を示すバイトマーク |

イチゴの花も受粉します |
マルハナバチの導入当初は「ハチが花に行かなくなるから花粉は与えないほうがいい」という迷信がまかり通っていたこともありました。
トマトの花から充分な花粉が得られる条件ではあえて乾燥花粉を与える必要はありませんが、高温期や厳寒期など花粉の生成が悪い時期は積極的に花粉を与える必要があります。前述の通り花粉は幼虫の成育に欠かせません。花粉量が足りないと幼虫が死んだり、世話をしなくなり巣の外に幼虫を出してしまいます。何頭かの幼虫が巣箱の隅に出されている群を見かけることがありますが、これは花粉の量が足りない証拠です。抑制栽培の初期や厳寒期にマルハナバチを導入する場合は、幼虫保護のために必ず花粉の給餌を行ってください。
導入している方で花粉を充分に与えた場合と与えなかった場合を比べると、明らかに与えた方が巣の寿命も長い傾向にあります。
ちなみに成虫は巣箱の中に入ってる糖蜜を餌にしています。巣箱の移動時に回収しきれない成虫は、トマトの花には蜜がないためそのまま放置すると死亡します。こういうときは使い終わった古い巣箱を元の場所に置いておけばその中の蜜を吸って生きています。古い巣箱がない場合は砂糖水を入れた容器を巣箱のあった場所に置いておくだけで成虫の餌となり生存できます。
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