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イチゴ うどんこ病の防除対策について

イチゴ栽培で厄介なのが病害虫の防除ですが、中でも最近多発傾向にあり一度発生するとなかなか完全に防除するのがが難しいうどんこ病の対策をご紹介します。

数年前まで、うどんこ病はイチゴの樹勢が衰える春先に多発する傾向がありましたが、最近では定植後のビニール被服を行った頃から発生が多く見られるようになりました。これは比較的うどんこ病にかかりやすい女峰、とちおとめ、とよのか、章姫などの品種の普及や、夏に低温処理を行う育苗法による感染の助長、または肥培管理により花芽誘導を行うことで樹勢の低下を招いていることが原因と思われます。

うどんこ病の特性を以下に紹介します。
項目 内容 備考
主な発生時期 促成、半促成栽培の2〜4月頃
・露地栽培の3〜5月頃
夏、冬以外はいつでも発生する
伝染源 発病している部位のカビ 枯れた場所には発生しない
伝染方法 風に乗ってカビが移る 乾燥で感染が進む
発生部位 葉、ランナー、果梗、果実、
花、つぼみ
多くの部位に発生
発病適温 20℃前後 比較的低温で発病する
好適湿度 80〜100% ハウス内の湿度で蔓延する

夏の暑い時期は発生がないように見えるうどんこ病ですが、実際は葉裏などに潜んでいます。秋になり低温条件で活動を始めて発病するわけですが、その前から油断せず定期的に防除をしておくことが必要です。 また育苗時の下葉欠きは過繁茂による風通しや日当たりの悪化を防ぎ、株間の湿度を上げないので感染しにくい条件を作ることができます。更に農薬の付着をよくする効果もあるので、適度な下葉欠きは不可欠です。 花芽分化を促進させるための夜冷処理は、イチゴの苗をうどんこ病の感染に適した条件に置くことになります。夜冷処理中やその前後期間は防除を徹底してください。

防除のポイント

●定植直前までの防除を徹底して無病株を定植します。
●夏季に発病がないからと油断せずに9月頃から防除を徹底します。摘葉との組み合せての薬剤散布は効果的です。
●夜冷処理を行う場合、前後期間も含めて防除を徹底します。
●花芽分化のために窒素を切ると樹勢が悪くなり発病しやすくなるので注意して下さい。
●保温開始後は重点防除時期なので、不要な下葉欠きと併せて薬剤散布を行います。

まとめ:
1.定植までの管理は油断せず定期的な防除が基本。
2.定植後は保温開始とともに発生する恐れがあるので初発を見逃さず、防除を
  徹底する。


発生程度よる防除の違い

初発時
●初発生は葉裏にうどんこをまぶしたような白いカビが見えるので、 下葉をめくって確認することが必要です。
●つぼみに発生する場合は、花びらがピンク色になるので注意してください。
●初発時はあまり薬剤を選びませんが、保温開始後の重点時期にはDMI剤(EBI剤)やストロビルリン系剤を散布します。それ以外の時期はポリオキシン剤、ジーファイン、サンクリスタル、サンヨール、スカーラなどの剤を散布します。(収穫中はポリオキシン剤などの使用ができないので確認の上散布をして下さい)

多発時
●葉がスプーン状に巻き、多くの葉や果実に白いカビが見られるような状態は多発といえます。こういったときはできる限りカビが生えた葉や果実は取り除いて4〜5日間隔で数回の薬剤散布を行います。
●薬剤はDMI剤(EBI剤)やストロビルリン系剤、またはジーファイン水和剤とサンクリスタル乳剤の混用散布します。効果が高いからといって同一系統の薬剤は連続して散布しないようにしてください。
●天候不順が続くときは、くん煙剤の使用が施設内の湿度を上げないので効果的です。
●散布は葉裏まで薬液がしっかりかかるように、多頭口の噴口を使って丁寧に行ってください。

まとめ:
1.初発を見逃さないように葉裏を確認することが重要。
2.花びらがピンク色をしているときは注意。
3.初発を認めたらできるだけ早く薬剤散布を行う。
4.初発時の薬剤はあまり選ばないが、保温後はDMI(EBI)剤を使う。
5.多発時はカビが生えている葉や果実はできるだけ取り除く。
6.多発時はDMI剤を中心に4〜5日間隔で数回の薬剤散布を行う。
7.同系統の薬剤は連用せず、散布は丁寧に行う。


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