イチゴの新品種「章姫」

萩原先生の栽培ポイント
<章姫の栽培(基本)>

6.苺の生育診断とは (2001.11.27)

 どの作物でも栽培上絶えず生育診断されている。苺の場合も同様に生育(健康)診断が行われている。
診断の方法や視点は、作物の種類や生育のステージによって当然異なる。例えばトマトの場合、キュウリの場合、稲の場合などすべて異なる。
苺の場合には、ランナー、葉、葉柄、花蕾、果実、等々の生長の変化や症状について診断されているわけである。つまり栽培者はその苺については主治医であるといえるわけである。

ここでは章姫のハウス促成栽培についての、診断のあらましについてふれてみよう。
一般的な視点としては、新葉の生長、展開、葉柄の付け根にある葉托の部分、葉先、そう果(種子)、がくの部分、葉先の縁、水孔から生ずる溢液現象、等々生育のステージによってその視点は異なる。
例えば生長の度合をみる場合、やがて展開して1枚の葉となる三枚の小葉が合わさって伸長してきたとき、展開し始めるまでの生長は、その後の伸長や葉面積に係わることが大きい。若し新葉が伸びはじめると同時に展開していれば、充分な伸長や葉面積は期待できないであろう。
養分の過剰や不足(欠乏)の症状なども様々である。とくに栄養診断については、その症状は品種や環境条件によって異なり複雑である。
例えば栄養診断の場合、たまたま不足(欠乏)症状が見られたとしても、必ずしも要素が土壌中に不足しているわけではないことが多い。 とくにハウス栽培で、よく見かけることであるが、不足より過剰症状が多く、また養分のアンバランスによる場合が少なくない。苺の場合必要とする要素の吸収が妨げられていることも少なくない。 章姫の栽培で最近よく見かけるのが、葉縁先に発症するいわゆるチップバーン症状である。 一般にカルシウム欠乏として説明されているが、ハウス栽培で、カルシウムが不足していることは稀で、むしろ多すぎる場合が少なくない。つまりかなり多く土壌中に存在しているにもかかわらず、根が吸収できない場合が少なくない。

そこであらためてカルシウムの吸収を妨げている原因について概観すると、
@  夏の間よく見かけられるように、気温、地温が高過ぎはしないか。
A  土が乾燥し過ぎていないか。
B  チッソやカリが多過ぎて、養分のバランスがとれていないのではないか。
C  根が傷んではいないか。
D  潅水チューブの目詰まりはないか。
などがあげられる。

つまり栄養診断の場合、いくつかの要因が組合わさって症状が出る場合が多いので、他の養分や環境条件などを追求してみることが大切である。栽培管理の上での、意外なところにその原因が見つかることが多い。
章姫は根が丈夫で強いが、肥料は緩やかに吸収させることが多収のコツである

萩原 貞夫


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