■萩原先生の栽培ポイント
<章姫の栽培(基本)>
5.章姫の苗づくり
章姫の技術目標は、早期から連続して、良質な大果を多収することであり、その第一歩が苗作りであろう。
良質な苗、とはよくいわれるが、育苗の過程で、その具体的な指標となることは、あまり示されていない。 たしかにランナーの先端に発生した子苗から、小さな初生葉が生まれて、やがて3〜4枚の葉が着けば、かなり幼少な苗株でも花芽を着けることはできる。だからといってそれでいいわけではない。より安定した収量の得られる、揃った苗でなければならない。
近年きわめて育苗方法が、複雑多様化し、また本ぽの栽培条件も多様化しているので、すべて画一的に述べることはできないが、どの方法でもほぼ共通していると見られる要素は、育苗日数、苗の大きさ(冠部の太さ)、施肥と灌水上の留意、などがあげられる。
そこでいま比較的広く行われている鉢育苗(3.5号鉢、直径10.5cm)、の場合を例にとってみよう。この方法でも大別して、「受ポット苗」と、「移植ポット苗」とがある。「受ポット苗」では、発根してから、「移植ポット苗」では、移植してからを、通常育苗日数として数えている。もとより詳細に見れば、苗令は異なり、大きさも子苗の質も異なる。それを育苗といわれる期間に苗質としての条件を、より均質化することに育苗の意義があるといえる。
育苗日数は、50〜60日を目安とし、苗令による差は、摘葉によって苗質を揃えるようにする。冠部の太さは、直径7mm以上、10mm前後を目安とする。
施肥量は株当り、チッソ成分で、およそ150〜200mgが目安であるが、鉢土の肥沃度、育苗日数、鉢土の量、などにより当然加減するし、分施することがよい。
章姫は緩やかに肥効を維持継続することが、何より大切である。例えば育苗の後半、花芽分化前に肥料切れ状態におかれれば、芯止り株が発生し、定植後発生する葉は小さく、定植後の発育は遅延し、花芽は不揃いとなる。
そこで定植期における体内チッソ量を簡易測定すると便利である。芯葉から数えて第三葉の展開葉の葉柄の汁液をしぼり、メルク試験紙を開いて、硝酸態チッソが50〜100mg以下の色調が出ればよい。
以前は花芽分化前には、著しく肥料(チッソ)切れを起こさせることが、花芽分化を早め、花芽分化を揃えるということで、良いとされてきた時代もある。
章姫の育苗ではさけなければならない。
灌水は施肥と並んで苗づくりの基本である。乾燥、過湿の繰り返し回数が多いほど、また肥切れさせたり多肥することは、根の活性を低下させることにつながる。いうまでもなく苗質を左右する要素は根の活性である。限られた小さな鉢の中で根の活性を維持するには、展開葉3〜4枚はどうしても必要であり、緩やかな肥効と灌水が大切な要素である。
萩原 貞夫
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