■萩原先生の栽培ポイント
<応用技術>
1.炭酸ガス施用のために(平成13年11月27日)
炭酸ガスは、光合成を増進させるために重要な要素の一つである。
極く簡単に述べるならば、光合成とは、葉によって光と水と炭酸ガスをもとに、炭水化物がつくられる。それをもとに酸素を発生する反応である。
そこで苺の光合成を増進するために、補給してやるのが炭酸ガスの施用である。
苺はトマトやキュウリのように多量の炭酸ガスは必要ではないとされて、その施用の実用化には、いままでとかく軽視され、補給技術もおくれがちであったが、苺の場合とて炭酸ガスが不足すれば、当然収量や品質が低下するわけである。
土耕栽培では多量の有機物が施用されるので、とかく軽視されてきたが、不足する時間帯があることには変りがない。近年高設栽培の普及とともに、その必要性が認められ、かなり注目されるようになった。
炭酸ガス濃度の影響は、温度と光の強さによって異なり、弱光ほど効果は少なく、強光ほど効果は大きい。
温度とのかかわりをみると、強光ほど光合成の適温が高く、また炭酸ガスが高濃度ほど、光合成の適温が高い。つまり温度が高めの時には、炭酸ガスも高濃度必要だということである。
だから冬期温暖で多日照の方が、光合成本来の特性からみても、その炭酸ガスの効果は出易いわけである。 ところが以前から冬期低温で少日照の地域に多く用いられてきた。それは比較的弱光下でも、ハウスの密閉時間が長く、炭酸ガスが外へ放出されないためとみてよい。
一方冬期温暖で多日照地域では、気温の上昇によって、換気する時間が長いことと、適切な施用法に及ばなかったためとみてよい。
しかし章姫の場合、比較的高目の温度管理が行われるようになったので、その効果が認められ注目されるようになったといえる。
つまり高温管理をすれば必然的にハウス内の炭酸ガス濃度は低下するし、光合成も低下を招き易いからである。
苺の光合成の適温域をみると、品種によってかなり異なる。一般的には葉温20〜24℃を目安にしている。そのためハウス内温度は、やや高めを目安にして昼温25〜27℃に温度管理することを目標としているわけである。
そこで実際栽培と炭酸ガスの施用を結びつけてみると、大気中の炭酸ガス濃度は、通常360ppmとされている。 ハウス内における炭酸ガス濃度の、日変化とその推移をみると、日の出直前に炭酸ガスは最高に達する。
例えば土耕栽培の場合には、日の出直前に600〜700ppmに達していることも珍しくない。それは土壌中の有機物の分解によって生じたことと、苺の呼吸作用によって放出されたものである。
だが朝日が出て、光が強くなり、温度が上昇してくるにつれて、炭酸ガスの濃度は急速に減少する。つまり苺の光合成によって吸収されたためである。
さらに換気とともに炭酸ガス濃度は低下を続ける。 そこで日の出直前には最高に達したものが、日の出とともに低下してくる。だから日の出後の不足する時間帯に補給しようとするのが炭酸ガスの施用である。そのため日の出の30〜60分前から補給し、日の出と共に光合成を増進してやるわけである。
これまでの研究によれば、日の出直前に、1200〜1300ppmが炭酸ガス濃度の飽和とみられている。当然その飽和温度は、光と温度によって変動する。
以上炭酸ガス施用について、極くあらましを述べたが、いうまでもなく強日照で、やや温度の高めのとき、炭酸ガス濃度が高いことが効率的である。
また炭酸ガスの補給効果だけでなく、炭酸ガス発生機によるハウス内温度の上昇が、相乗的効果をもたらしていることも見逃せない。
こうした光合成本来の特性からみれば、温暖多日照の場合とともに、冬期比較的低温でも多日照の地域にその効果は期待されるであろう。
萩原 貞夫
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