■萩原先生の栽培ポイント
<応用技術>
2.苺に対する電照とは(平成13年11月27日)
苺は自然条件下におかれると、10月中下旬になり、低温と短日条件にあうと、ランナーの発生が停止し、新葉の葉柄は短くなり、やがて株全体が矮化状態になってくる。この現象を休眠状態と呼んでいる。他の作物や種子に見られる休眠とは異なるので、苺の場合あらためて休眠現象と呼ぶわけである。つまり苺はそうした状態になっても、花芽や葉は僅かでも生長しているからである。
一旦休眠状態に入った苺は、5℃以下の温度に一定時間遭遇しないと旺盛に生育してこない。つまり5℃以下の低温に一定時間遭遇しないと覚醒してこないわけである。この経過する時間を、低温遭遇時間または休眠打破のための低温要求量と呼んでいる。長い時間を必要とする品種を休眠の深い品種と呼び、短い時間でもすぐ目ざめてくる品種を休眠の浅い品種と呼んでいる。また四季成性の苺のように低温を必要としない品種もある。
章姫は低温要求量の極めて少ない、いわば休眠性があるのかないのか判らないほどの代表的品種である。だからハウス促成栽培で高い能力を発揮しているわけである。
苺は低温要求量を満たせば、高温と長日条件によって生長が促進される。 こうした苺の生理特性を応用して開発されたのが電照である。
章姫は休眠性のことが問題にならない促成品種であるから、元来電照によって生長を促す必要が少ない品種である。 だがビニール被覆が遅かったり、初期生長が劣り、生育が鈍化した場合きわめて稀ではあるが電照が用いられることがある。
そのためここでは電照のことについてあらましをふれておこう。
電照の方法について大別すると、次の四つに分けられる。
@ 日没から行って日長を延長する方法
A 夜明けから日の出まで行う方法
B 光中断といって、夜中に電照し、夜の暗黒を中断してやる方法
C 間欠法といって、日没から夜明けまで、1時間に10分電照、50分暗黒、といった繰返しによる方法 などがある。
また電照による生長反応、つまり効果は、光の強さ、時間、温度、などによって異なる。
一般に電照の意義は、日長を長くすることで普通は解り易く、長日にするとして説明されているが、大別した四つの方法でもわかるように、苺の生理についての本来からみれば、いうまでもなく連続した暗期の時間によって生長は支配されているわけである。
そうでないと光中断法や、間欠法について解り易く説明がつかない。
さてそこで一般的に行われているのは、日没から数時間電照して一日の日照をおよそ13時間程度に延長してやることを目安にしている。前述のハウス内温度が高い方が効果(反応)が高いので、夕方の延長が広く用いられるわけである。
萩原 貞夫
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