■萩原先生の栽培ポイント
<ビニール被覆後の管理>
1.ハウス内温度は葉の動きを支配する。
ビニールを被覆して、出蕾開花してくると、イチゴの生育相は次第に転換してくる。それまでは、いわば苗の時代であったものが、開花、結実、成熟期へと生育相は大きく転換移行するわけである。
その為出蕾、開花してくる頃から、ハウスの温度管理は重要な作業になってくる。
いうまでもなく章姫を連続して、大果多収するための要点は、「温度と水と摘果(花)」であることは、すでに述べた。
たしかにハウス促成栽培の時期は、低温と寡日照の季節である。だがここで注目したいのは、外気は冬の低温であっても、ビニールハウス内の温度環境は常に春から初夏の環境下におかれている。だから潅水も温度管理もそれなりに気を配らなければならない。
静岡の場合でみると、晴天であれば日照もイチゴにとって、それほど著しく不足しているわけではないし、光を左右することはむずかしい。
いうまでもなく、イチゴの葉の働きによって行われる光合成は、単に温度だけではなく、「光と炭酸ガスと温度」が大切な要素であり、その組み合わせの相互作用によって光合成速度は変わり、差が生じてくる。
例えば極めて大雑把にとらえるならば、光が強く、炭酸ガスが多い時には、温度は高目の方が光合成速度は高まり、当然光飽和も適温も変わってくるわけである、栽培上からみると最も人為操作しやすい要素の一つが温度である。
一般にハウス内での炭酸ガス量の推移をみると、朝方日の出前には、大気中のおよそ二倍以上にも高まっている。
そのため特に冬期間に朝方早い時間での換気はプラスにはならない。ハウス内の温度が適温に近い状態まで上昇してくるのを待って換気を行ない、光合成を充分助長してやることが得策である。早朝低温時の換気を継続すると、やがて生育を抑えることにつながる。
また温度管理は光合成だけでなく、葉からの蒸散や呼吸にも大きく影響してくる。そこで章姫の葉の働きを助長する温度をみると、比較的高目の温度域にあるとみてよい。
光合成にまつわる温度は、本来葉温を指しているわけであるが、栽培上一般にはハウス内気温で示されている。
章姫の場合、温度管理の目安とされるハウス内温度は、昼間25〜27℃、夜間最低5〜6℃である。 昼間30℃を超えると、直接的な障害はないとしても、葉からの蒸散や呼吸が旺盛となり、光合成産物や養水分の消耗が激しくなり、生育環境としてはマイナスに働く。
昼間の温度が低い時は、呼吸や蒸散による消耗は抑えられても、光合成の減少が大きいので生育は抑制される。開花、結実、成熟期には、花や果実への光合成産物の吸引、供給が著しいので、葉の働きを充分助長する温度管理を行わないと、連続的な大果多収は期待できない。
萩原 貞夫
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