■萩原先生の栽培ポイント
<ビニール被覆後の管理>
2.章姫の摘果(花)は収穫の連続性を支える
イチゴの果実の大きさを決定する花の素質は、花芽分化してから花蕾となるまでの、花の発育過程で決定づけられる中でもその素質として重要なのは、「そう果(種子)」数である。
つまりイチゴは「そう果」数の多少によって果実の大きさが左右されるからである。章姫は大果系のイチゴであり、それだけに「そう果」の数も多く大果となる素質を備えている。
だが同じ花房の中には、大果となる素質を持った花と、大果にはならない素質を持ったものとがある。 そこで大果にはなり難い果実や花蕾を摘果(花)して、光合成産物や養水分の無駄な供給をなくしてやるのが、摘果(花)作業である。
同じ花房でも果(花)数が多くなればなるほど、光合成産物の吸収力の競合による供給量は、個々の果実によってその差は著しくなる。
本来大果となる素質を持っている果実でも、着果(花)数が多いと、その発育は阻まれることになる。
そこで章姫を連続して大果多収するためには、摘果(花)が必要だし、「水と温度と摘果(花)」が、ハウス管理の技術目標としてあげられるわけである。
摘果(花)の主な目標としているのは、
@ 収果揃いをよくする。
A 光合成産物や養水分の無駄な供給をなくする。
B 次々と発育してくる花房の発育を、促進、助長することとともに、良質な花芽を造成させる。
ことなどがあげられる。
摘果(花)は、同じ花房の中でも、先発のいわば素質のよい、優勢な果実や花を残して、後発果(花)を摘み取るわけである。
後発果(花)を摘み取ることによって、先発果が著しく大果になったり、肥大したりする効果は、それほど著しく現れるものではない。
ではなぜ適果(花)を章姫栽培の欠くことのできない作業として取上げ、その必要性を強調しているのか。それは次々と出て来る花房や花芽形成中のものにとって、他の品種には見られないほど著しい効果が現れるからである。
いままで適果の効果はとかく同じ花房内だけのことにとらわれがちであったが、適果(花)の効果は、株全体として、また収穫期間を通してみなければならないわけである。
最も大切な効果として現れるのは、適果(花)することによって、光合成産物や養水分の無駄な供給を除き、次々と出蕾してくる花房の発育が促進、助長されることである。
さらに花芽が分化し、発育の途上にある花房の発育が促進、助長されることである。
そのため収穫の連続性が維持され、ひいては大果多収にもつながるわけである。
適果(花)して残す果数は、株の草勢によって異なり画一的に着果数を決めるべきものではないが、通常の場合、適果(花)後に残す着果数の目安としては、頂花房で12〜13果、第1次腋花房で7〜8果、第2次腋花房で5〜6果、以後高次腋芽の花芽は漸次着果数を減少し、加減することが望ましい。
萩原 貞夫
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