イチゴの新品種「章姫」

萩原先生の栽培ポイント
<ビニール被覆後の管理>

6.章姫の栽培と地温(平成13年11月27日)

 章姫の栽培技術目標は、いうまでもなく連続的に大果、多収をはかることである。
それを支えているのは、根と葉と養水分である。 根と地温のことについては、すでにいままでの資料で述べてきたが、ここではとくに気温との係わりや、地温の日変化のことについてふれてみよう。

 根の果たしている役割と機能については、かなり複雑なものがあるが、ここでは極くあらましをあげると、根は株を支えていること、葉や果実に養分、水分を供給していること、そのために根端細胞で、土の中の酸素や、暗黒なところを探知しながら、伸長を続けているわけである。
その時の根圏域(根が伸び働いている範囲)の環境によって、根の働き具合は左右される。
根の寿命、つまり初生根の寿命は、自然環境化では、かなり長い。ところが根圏の環境、ハウスの環境などによって、その長短には大きな差がある。
例えば過乾、過湿、肥料濃度、地温と気温、坦果力、等々葉や果実とのバランスをとりながら、活性を保っているわけであるから、簡単ではない。

 地温のことについては軽視されがちであるが、章姫は特性上ハウス温度が比較的高温管理されるし、また近年高設栽培が普及していることなどから、地温は重視されなければならない重要な管理技術の一つである。苺の根の伸長や働きと地温の係わりをもう一度見直してみよう。
根は環境や品種によって、その適温域が異なるが、およそ10cm付近のところで、18〜20℃が適温と見られている。およそ23℃以上になると伸長や働きが急速に劣る。また10℃以下になると伸長が劣り、5℃以下になると、伸長や働きは停止するとみられている。
そこで地温と気温との関係についてふれてみよう。
地温の適温域が18〜20℃だからといって、常に根の適温におかれていることが望ましいわけではない。苺の生育は地温と気温との相互の係わりが深い関係にあることを知っておきたい。自然条件下で栽培すれば当然地温も気温も日変化しながら一日が経過する。 ましてハウス栽培では、一層環境は変化するので、地温と気温との関係を知っておきたい 。
概観すると、苺は地上部の温度、つまりハウス内温度が高いほど当然蒸散作用や呼吸作用が盛んになる。地下部の温度(地温)が低いと、値の伸長、養分、水分の吸収は劣ってくる。
そこで実際栽培と引き比べて、地温と気温との関係をみると、地温を高めた場合、気温が低いほど生育は劣り、養分、水分は需要と供給とがアンバランスになってくる。そのため収穫期に地温が低いと、果実の発育肥大、成熟収穫はおくれてくる。 つまり気温が高めの時には、地温も適温に近づけ、気温が低くなれば、地温も生育に支障のない限り、低めに管理することが当然望ましいわけである。

 章姫栽培の場合、品種の特性を活かすためには、単に地温だけを見ることなく、気温との関係を知ることと、さらに重要なことは、地温の一日の変化と推移を知り、管理を工夫することである。
萩原 貞夫

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